参考:2023年10月7日付 読売新聞
パナソニックに続いて日立製作所でも、家電の販売価格を指定する「販売価格制度」の導入が始まりました。
指定価格制度とは?
指定価格制度とは、メーカーからの卸先は正規店に限定され、価格も指定される制度のこと。
正規取扱店からメーカーへの返品が可能となるため、販売店にとっては売れ残って在庫を抱えるリスクがありません。
しかし、消費者に対しては指定価格で販売するため、価格ではなくサービスで競争する必要がでてくるのです。
この制度を取り入れる理由としては、「量販店などの値引き販売による値崩れを防ぐため」や「開発費の削減」が挙げられます。
2020年にこの制度を導入したパナソニックでは、年間1000億円程度の収益改善効果があったそうで、国内の白物家電の5割を対象としていく計画も掲げました。
パナソニックの松下副社長は、「消費者に商品の価値を理解して購入してもらうという考えは広がっていくだろう」と述べました。
ちなみに現在は、メーカーが価格を指定しない「オープン価格」が主流となっています。
商品を仕入れた販売店は在庫として商品を抱え、かつ返品も不可。しかし、自由に値引き販売が可能です。
例えば、新商品が発売される前に、在庫処分として大幅な値下げをするなどの販売方法があります。
独占禁止法には該当しない!?
独占禁止法では、メーカーが販売価格を指示することを禁止しています。
しかし、この制度では在庫リスクをメーカー側が負うため、委託販売とみなされ違反にはならないのです。
「指定価格制度」の懸念点とは
メーカーは「指定価格制度」で再び価格設定の主導権を握ろうとしていますが、現在は安価な海外製品を店頭で数多く目にするようになりました。
これまでは国内の大手メーカーの製品を少しでも安くお得に買えるのであれば、そちらを選ぼうという意識があった消費者でも、その価格差が広がることで「安心の国内メーカー < 価格の安さ」に意識が変わる可能性があります。
家族が増えるタイミングやマイホーム購入時などは、まとめて家電を買い替えることも多いので、「少しでも安く手に入れたい!」「できるだけお得に買いたい!」と思うのが消費者の心理ですよね。
今回の「指定価格販売」という制度は、消費者が少し背伸びをしてでもブランド力の高い製品が欲しい!と思えるかが鍵になるでしょう。
ブランド価値の高い製品であれば、定価で購入したとしても、手に入れたことによる満足感は大きく、ステイタスのひとつにもなります。
品質や信頼性の高さにおいて、すでに世界でも高い評価を受けている国内の家電メーカーが、いかにしてブランド力やブランド価値をさらにあげて「家電は定価で買うもの」という認識を浸透させられるのか、イチ消費者としては今後の動向が気になるニュースです。